〜経営陣のプレッシャーと現場の反発、その板挟みに悩む人材育成担当者へ〜
前回のコラムでは、「人的資源」から「人的資本」へと流れが変わっている理由を、 組織の発展段階モデルをもとに整理しました。
今回は、さらに視野を広げ、過去40年の社会・政策・制度・経営の変化を年表で俯瞰することで、 人的資本が“突然のブームではない”ことを確認していきます。
上記年表から、「人的資本経営」は社会の変化を受け政治を軸に取り組んできた1980年代から40年かけて積み上がってきた流れの過渡期にあることがお分かりいただけることでしょう。
1980年代:個性重視、雇用均等法
1990年代:成果主義、働き方の多様化
2000年代:メンタルヘルス、キャリア教育、高齢化社会への対応
2010年代:理念経営を土台としたパーパス経営への移行、健康経営
2020年代:人的資本経営をベースにジョブ型・リスキリングなど社会の変化へ組織も人もアップデート
以上のことから、人的資本は「制度対応」ではなく、 人材育成・組織開発の文脈で自然に到達した次のステージへの移行期であることが汲み取れます。
そして2030年以降を見据えると、既に予測可能な未来である、人口構造、AIの普及、働き手の価値観などの変化は加速し、
- 人材の獲得競争の激化
- 自律的キャリアの前提化
- 組織文化の透明性の要求
- 健康・ウェルビーイングの重視
といった流れがさらに強まることは想像に難くありません。
また、変化は加速し、2025年改定による国際基準であるISO 30414(次回のコラムでご紹介)一部指標の必須化や、日本国内における2027年度からの選択項目開示の必須化など、制度面でのタイムリミットも迫っています。
そのため、今人材育成部門および担当者に求められているのは、今後の変化をふまえ、企業が直面しやすい“人の課題”を先回りして解決していくための取り組みです。
人の課題とは主に次の3つを指します。
- 採用
- 定着
- 活用(評価、配置を含む)
幸いこれらは、「人的資本経営」に取り組むことで改善しやすく、長期的にみると、企業業績向上にもつながりやすいため、好循環を呼ぶ施策です。これらは既に先行導入企業での事例が多数紹介されているので、メリットについての理解をされている方も多いことでしょう。
また実際に弊社がお手伝いしてきた組織でも、同様の成果をあげられています。
一方、手つかずになりやすいのにも理由があります。
現場には主に次の6つの障壁があるからです。よろしければ、下記チェックください。
□人手がかかるため後回しになりやすい
(労務、採用、育成を少人数で行っている)
□経営層の理解が得られず、投資がしにくい
(経営層に「人的資本」のニュアンスが伝わりづらい)
□自社の状況と施策がかみ合わないと成果が出にくい
□本来の意味で好循環が生まれるまでに時間がかかる
(成果が見えないと、担当者としても不安になる)
□社員が忙しく、未来のための時間を確保してもらいにくい
(社員は学ぶ意欲があっても、管理職が渋る)
□取り組みたいと思っても、協力してくれる社内理解者がいない
など
ほとんどの人材育成に携わるご担当者が、上記課題を抱えているといっても過言ではありません。
また短い言葉で「人的資本経営」と表現されているので手軽感はありますが、実際は、人と組織の意識や文化の変革を促すものです。人間の本能に「変化を受け入れることに抵抗がある」という面から見ると、一定の成果をあげるためには、多くのエネルギーを要すことは事実です。
こうした事実はありながも「人的資本経営」の指針を機会と捉えアプローチすることは、少し先の未来に、人と組織の関係が良好になる、という面から見て、早めに着手しておくのがよい、と、人材育成に携わり30年以上の経験からも言えることです。
次回は、「人的資本経営」の世界と日本での国際比較について紹介します。
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