中核層不在の「ワイングラス型組織」をどう解決するか─「人的資本可視化指針」を活用した、持続可能な組織づくり

2026.07.21 HumanCapital

「採用を強化してほしい」と上層部から指示を受けるものの、採用したい層は競争が激しく思うとおりに採用ができない。採用し期待をかけた人たちが数年で離職することが続くーこんな状況に、採用・育成担当として徒労感を覚えていませんか。
また、育成に携わった現場の人たちが「どうせ辞める」と、育成することへの熱量が下がっていないでしょうか。
今、人材の採用・定着に悩む組織の多くが似た悩みを抱えています。

先日ある採用・定着のセミナーに参加したところ、採用のプロは語気を強めて
「現有人材の定着と成長、エンゲージメント向上が最優先。その課題が解決されない限り、採用はうまくいきません」と断言されていました。
もし、採用しても定着しない、中核層の離職が続いている、といった課題がある場合、「人的資本可視化指針」に則った取り組みが有効です。今回はそのことを順序だててお伝えします。

「ワイングラス型組織」とは
自組織の社員構成を見た時に世間でよく言われる「ワイングラス」のような形になっていないでしょうか。「ワイングラス型」の組織には次の特徴があります。

  • 30〜40代の中核層が薄い
  • ベテラン・シニア層が現場を支えている
  • 若手を採用しても任せられるようになったタイミングで離職する
  • リーダーとして期待したい中途採用がなかなか採用できない

ではなぜ、ワイングラス型組織になってしまうのでしょうか。その要因を4つの観点で整理していきます。

▼ ワイングラス型組織になってしまう4つの要因

観点1:働き方の価値観の変化に対応できていない
今の若手や中堅世代は、 勤務地・処遇・働きやすさ・自分の時間の確保など、 生活の充実を軸に仕事を選ぶ傾向 が強くなっています。
そのため、 「会社の都合」よりも「自分の生活」を優先できるかどうかを常に考慮しています。

観点2:自身が育った価値観のままのベテランの指導が若手の離職に直結しやすい
ワイングラス型組織では、 ベテランが若手や中途採用者を指導する構造が自然に生まれます。
しかし、

  • 「自分の生活」を優先する若手・中途採用者の働き方への価値観が理解できず、自身の社会人経験をベースとした価値観で相手をはかるため、関わり方がズレる
  • 指示や指導が「口頭」中心
  • デジタル化できる業務をアナログで対応している

など、これまでの価値観ややり方を見直すことなく取り組むため、若手や中堅が「ここで成長できるか」を早期に判断するため、 指導の質が離職率に直結するリスク が高いのです。

観点3:リーダー職への昇格が“負担”として受け取られやすい
また、一定の力がついた若手・中堅に対して、 「そろそろリーダーへ」という期待がかかります。しかし、

  • 責任が増える
  • 時間の融通が利かなくなる
  • 自分のやりたいことができなくなる

という不安から、 昇格=キャリアの魅力、ではなく、負担 に感じて離職につながるケースが増えています。

観点4:リーダー職になってもフォローできる体制が弱い
ワイングラス型組織では、

  • リーダーが孤立しやすい
  • 周囲がフォローできる体制が整っていない
  • 育成・評価・業務配分が属人的になりやすい

という構造的な課題があります。

以上4つの観点から整理しました。

このような状態に、どのようにアプローチされているでしょうか。
がむしゃらに採用活動に力を入れていないでしょうか。
冒頭の採用のプロが言うように、このような状態で最優先すべきことは「社内体制の見直し」です。
そして「社内体制の見直し」は、今上場企業に求められている「人的資本経営可視化指針」に則った手順で取り組むことが、一見手間がかかりそうに見えますが、実は見直しを最も効果的・効率的に進められる善処となります。

人的資本可視化指針が効果を出しやすい理由
「人的資本経営可視化指針」は、経営戦略をもとに人材育成戦略を構築し、
【採用・育成・配置・評価・エンゲージメント】を一体で捉えることを求めています。

実は、ワイングラス型組織の課題は、この「一体設計」がないことに起因しているケースが大半です。
つまり、

  • 経営戦略に沿った人材戦略がないので、施策が担当者ごとに五月雨的に行われ、成果につながりにくい
  • 人材戦略がないので、社員自身が自身の未来となるキャリア像を描きにくく、成長実感が得られず「このままでいいのか」と悩みやすい
  • 戦略達成に向けた育成機会が乏しいため、成長の個人差が大きい
  • 育成機会が乏しいため、業務ができる人に偏りやすい。また、その偏りに見合った評価はなされにくい。業務ができない人が放置され、問題ある人になりやすい
  • マンネリ化により組織のムードに活気がなく、意欲のある人ほど離職につながりやすくなる

などが起こりやすくなります。

だからこそ、しっかり人材育成戦略(制度・環境づくり含む)を立てたうえで施策を行い1つずつ積み上げ、成果検証をしながら、現有人材が理解・納得しやすいように進めていく。これが、 ワイングラス型組織が人的資本経営可視化指針に則って取り組むメリットです。

「組織の疲弊」を止め「成長に転じる」ために
ここまで見てきたように、ワイングラス型組織は構造的な課題を解決する必要があるため、個別に施策を積み重ねても成果に至らないばかりか、疲弊感・徒労感が蔓延していきます。

そこで必要なのは、

  • 経営戦略をベースに「人材戦略」を立案する
  • 「人材戦略」をベースに、処遇→評価→育成→採用の順に見直しを図る
  • 「人材戦略」と様々な施策の見直し背景を、管理職や社員に伝える
  • 「人材戦略」の実行は、人事・人材育成担当者がリードするものの「全社員」による取り組みが必要であることを繰り返しメッセージする
  • 実行された施策で成果があがった点を共有し「やればできる」というムードを高める
  • 「人材戦略」上の課題は絞り、全社員が力を合わせて乗り越えるべきものとして認知を得る

という取り組みを続けることで、 組織の疲弊感が止まり、成長の循環が生まれます。

▼まとめーワイングラス型組織は「長期で育てる」思想と最も相性がよい
「人的資本可視化指針」を活用し、持続可能な組織づくりへ

ここまで見てきたように

  • 未来を担う中核層が薄い
  • ベテランが支えている
  • 若手や中堅の採用が厳しく、定着に不安
  • リーダー層が育たない、離職する

という課題を抱えるワイングラス型組織の課題解決には、「人的資本可視化指針」に則ったアプローチが有効です。「人的資本可視化指針」は、これから取り組むことで十分効果が出るアプローチ方法です。まずは、国やリーディングカンパニーの好例などの情報収集からスタートしてみてはいかがでしょうか。その一歩が組織の変化を促します。

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