2026年・指針改定で求められる「自社らしい」人材像の描き方

2026.07.03 HumanCapital

2026年の人的資本可視化指針改定では、「人材像」と「人材戦略」を明確に示すことが強く求められるようになりました。 このことにより、それぞれの組織が掲げる Purpose や経営戦略、中長期計画を達成していくために、「どのような人に、どう活躍してもらうのか」「将来に向けてどのように機会をつくり、訓練を行っていくのか」を具体的に示す必要が生じています。

しかしこれまでの日本の組織は、どちらかというと「世間的に求められている能力」や「トレンド」などを加味した人材像になりがちでした。例えば、次のようなキーワードがよく並べられています。

  • DX人材、グローバル人材、マネジメント人材
  • 若手育成、リスキリング、キャリア自律、エンゲージメント向上 etc

今回の改定で求められる要件に従うには、これらの一辺倒な言葉ではなく、「自社の独自性」を具体的に表現しなければなりません。


人事・人材開発部門が“自社らしい人材像”を描く起点をつくる
様々な企業のご担当者様のお話を伺っていると、「人材像」や「人材戦略」を明確にするために、どう動き、どう取り組んでいけばよいかでつまずかれている様子がうかがえます。 本来は、人事・人材開発の部門が中心となり、様々な部門の責任者に働きかけて構築することが理想ですが、「人的資本経営」への理解が進まなかったり、実務が多忙でなかなか場をもてないようです。

であるならば、まずは自社のPurpose(理念・価値観)や経営戦略(中長期計画)を元に、人事・人材開発部門としての「ベースとなる案」を自ら示していくことが現実的です。

その案を組み立てる上では、次の2つの視点を取り入れる必要があります。

  1. 経営戦略の実現に向けて必要な能力を表現したもの
  2. 自社の文化・価値観に基づく能力(全社共通の考え方や行動様式)を表現したもの

これらの視点は、人的資本経営を先行して進めている企業でも共通しており、2025年以降「人的資本レポート」を発行する企業が増えてきました。そこで、実際のレポートを見ることでその描き方がより具体的に理解しやすくなります。


先行企業に学ぶ「ストーリー性」と「独自性」
それでは、ここで2つの企業の事例を合わせてみていきます。両社ともレポートを紹介するリード文にもその特徴が明確に表現されているので、合わせて掲載します。

1.サントリーホールディングス株式会社、サントリー食品インターナショナル株式会社
『本レポートは、サントリーの人的資本に対する考え方や具体的な取り組みについて、社内外のステークホルダーの皆さまに広くお伝えすることを目的としています。 サントリーは創業以来、「人」こそが経営の重要な基盤であるという「人本主義」の考えのもと、社員一人ひとりの多様性・可能性を尊重しながら、企業成長と社会への貢献を目指してきました。今回のレポートでは、経営戦略に基づいた人・組織の目指す姿から人財戦略方針を示し、その方針に沿って「イキイキと働ける環境づくり」「キャリアオーナーシップを持ち学び続ける機会の提供」「多様な経験・挑戦し続ける機会の提供」など、さまざまな取り組みについて紹介しています。 今後も私たちは、「やってみなはれ」の精神と共に、社員一人ひとりがイキイキと働ける環境づくりと多様な成長機会を提供し、サントリーらしい人的資本経営を進化させてまいります。』

▼経営の目指す姿と人財戦略

項目 内容
経営の目指す姿 世界で最も信頼され、愛される、オンリーワンの食品酒類総合企業
人・組織の目指す姿 「多彩な個」の力を磨き、 ONE SUNTORY One Familyの総合力で 新たな価値を創造し続ける「やってみなはれ」集団
人材戦略方針 すべての社員が創業の精神のもとに集い、「やってみなはれ」を発揮できる組織づくり
多彩な個」の成長支援とグループの総合力発揮に繋げる人財育成

引用:SUNTORY人的資本レポート2025


2.
東京ガスグループ
『近年、無形資産の重要性が高まる中で、東京ガスグループでは一人ひとりの人材を単なる資本ではなく「心をもつ貴重な財産」と捉え、挑戦を奨励しながら人材の価値を高め、多様性を尊重しながら最大限その価値を発揮する環境づくりを進めています。 本レポートは、未来と今の従業員や、お客さまをはじめとした多様なステークホルダーに対して、外部環境が大きく変わる中で求められる変革を実現するためにグループ員が前向きにミッションに取り組む姿や、経営戦略と連動した人事戦略に基づく各施策の具体的な内容などをお伝えし、東京ガスグループの人的資本経営についての理解を深めていただくことを目的としています。』

経営理念・価値観・経営ビジョン・人材戦略

項目 内容
経営理念 人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。
価値観 挑み続ける:日々、新たに挑戦し、学び続けます。
やり抜く:何事も自分事として結果にこだわってやり抜きます。
尊重する:価値観を認め合い、互いの可能性を大切にします。
誠意をもつ:「ステークホルダーと地球」の未来に対して、誠意ある行動をします。
経営ビジョン 2030年に向けた3つの挑戦
「Co2ネット・ゼロ」をリード
「価値共創」のエコシステムを構築
「LNGバリューチェーン」の変革
変革を実現するための人材戦略
ー挑戦による成長
ー多様性を力に
今と未来の仲間との3つの約束
・社会に大きなインパクトをあたえる仕事を生み出します。
・一人ひとりの自己実現にこだわります。
・多様性がぶつかり合い、切磋琢磨する場をつくります。

引用:東京ガスの人的資本レポート(2025年)

以上の例からお分かりいただけるように、「人材像」や「人材戦略」の表現や見せ方は、自社の特徴を反映させることで、強い独自性やストーリー性が生まれます。自社が目指す姿やこれまでの歩みをふまえ、人事・人材開発部門が主導となり、自社らしい表現を考える参考になれば幸いです。

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