『リーダーは夢を語りなさい』に学ぶ、畑違いのリーダーが自己肯定感の低いスタッフを一流のスタッフへ導く過程

2021.11.05 Inner Branding Case

人事や人材育成に携わるご担当者様は、離職率、メンタルヘルス疾患率を低減させ、社員にやりがいや働き甲斐をもってイキイキと働いてほしい、そのために、
・心理的安全性のある職場風土はどのようにつくるのだろうか
・一体感のある組織にするにはどうしたらよいだろうか
・風通しのよい組織にするにはどうしたらよいだろうか
・社員一人ひとりが考え動ける組織にするにはどうしたらよいだろうか
・社員が自発的に学習する組織風土をつくるにはどうしたらよいだろうか
という問題意識のもと、取り組まれているのではないでしょうか。

そこで本コラムでは、理念や方針を、社員一人ひとりのやりがいや働き甲斐につなげ、お客様はもちろんのこと、地域や業界に対して高い貢献をされている企業の具体的な取り組みを、書籍などをもとにご紹介しております。

2021年11月現在、COVID-19の感染状況も落ち着いてきたことから、多くの方がそれまで控えていた出張や旅行をされるようになってきました。出張や旅行で利用が増えるのが新幹線。今回は、新幹線の清掃会社JR東日本テクノハートTESSEI(以下、TESSEI)についてです。

TESSEIは新幹線の清掃の会社ですが、「新幹線の車内清掃」という、限られた時間で行う業務にイノベーションを起こした会社として知られています。
その取り組みは2015年にハーバード大学のイーサン・バーンスタイン助教授とライアン・ビュエル助教授の2人によって、テッセイを題材にした教材「Trouble at Tessei (テッセイのトラブル)」(2015年1月出版)として紹介され、ハーバードのケーススタディととして採用されたことから、またたく間に世界から注目される存在になりました。

しかし、2005年当時のTESSEI(旧社名 鉄道整備会社)は、
・仕事内容が地味でキツイ
・お客様からのクレームが多い
・働いているスタッフにも覇気がない
・100社ほどあるJR東日本の子会社のうち、最下位ランクの位置づけ
であったそうです。
そこに、40年の鉄道マン人生を終えた矢部輝夫氏が、定年後のキャリアとして赴任することになりました。これまで経験のない「清掃」の分野への挑戦。そこからTESSEIの物語はスタートします。

着任してみると、親会社から来た人間に対しての根強い不信感があることが肌で感じられるほどのギスギスした雰囲気だったそうです。そのような状態から一体どのように導いていったのでしょうか。

ここでは、矢野氏が組織を変えていく手前の段階に着目し紹介します。

TESSEIは、どんな人でも赴任後必ず1カ月の研修を受けるそうです。

一緒に汗を流すことでしか得られないものがある
とにかく、入りたての私は懸命に掃除をやるしかありません。
意図的にやったというより、目の前の掃除を時間内に終わらせるためには、懸命にやるしかなかったというのが実情です。計算が入る余地などありません。
入社したのが七月だったので、その暑さは尋常ではありませんでした。しかも、慣れないためにバタバタ動くので無駄な動きが多く、余計な体力を使ってしまう。飲み物を口にする余裕もなく脱水症状になりそうになったこともありました。
ある日、いつもの習慣で、半そでのユニフォームの下にランニングシャツを着て仕事をしていました。ランニングは汗を吸い、ユニフォームに跡がくっきり浮かんでいます。
すると、スタッフの女性が勢いよく声をかけてきました。
「矢部さん!ランニングはダメ。汗をかいたことがわかって、お客様に不快な思いをさせてしまうから。下着も半そでを着てください!」
細かいところまで気を使って仕事をしている——―。
ふと見方が変わりました。そうした目でスタッフたちの仕事ぶりを改めて見てみると、彼らの能力が高く、真面目で、仕事に対して非常に真剣に取り組んでいることはすぐにわかりました。
しかし、一方でそれが現場の活気につながっていないことも事実です。その点で見てれば、これまでの上層部がスタッフを評価していないこともあながち間違いというわけではありません。実に惜しいことです。これをどうやって変えていくか。そんなことを考えながら掃除の実習に没頭していると、スタッフたちからさまざまな声が寄せられてきます。
JR東日本時代もそうでしたが、言動が派手で目立ちやすい人はいるものです。そうしたスタッフを指して、別のスタッフがこっそりつぶやきます。

「矢部さんね、派手な人って目につきやすいでしょ。でもね、派手なことは言わないけど、地道にコツコツやっている人がうちにはいっぱいいるのよ。その人たちをちゃんと見てね」
別のスタッフは、こうつぶやきます。
「矢部さんね、私たち忙しいでしょ?お年寄りのお客さまが困っておられて、ご案内するけど、そのあとどうなったか心配なの。なんとかしてあげたいんだけど、時間がないからそれも無理。そういうのをうまくできないのかしら?」
彼女たちは、子育てや介護などあらゆる経験を積んでいます。さまざまな人生経験をして、さまざまな職に就き、流れ着くようにしてTESSEIへ来た人も少なくありません。その人たちの細やかな感覚を、お客さまはもちろんのこと、スタッフ同士にも持ち込んでいるのです。新鮮な発見でした。若い人にはない感覚です。
気がつけば、一カ月の研修はあっという間に終わっていました。その後、人づてにこんな言葉が耳に入ってきました。
「私たちと一緒にあんなに一生懸命にやった人ははじめてね」
矢部なら信頼できる。その時点でそう思ってくれたわけではありません。しかし、少なくとも意見をぶつけてはいい相手だとは思ってくれたようです。

注目される組織のケースは、成果を見て、成果をあげるための仕組みに注目が集まります。
その後、仕組みを導入する企業がありますが、成果につながるケースは稀で、多くの場合がうまくいきません。
それは一体なぜでしょうか。

その答えはシンプルです。
引用のアンダーラインの部分に着目ください。
矢部氏が取り組んだことは、新しい仕組みを入れることではなく、既にできていること、それぞれが努力していることを見つけ、それを認め、そこを伸ばしていけないか、と考えるところからスタートしています。

一人ひとりの考動の中には、組織にとってよいものが必ずあります。
しかし多くの場合それは目立たず「取るに足りないもの」として扱われがちです。
そして、成果に近い部分のみに注目が集まり取り上げられます。
それでは、将来成果につながっていくであろう小さな考動の芽を摘むばかりでなく、自信をもてなくなっていきます。

そこで必要なのが、リーダーの観察する力です。
・既にできていること、うまくいっていることはないか
・できていること、うまくいくために、それぞれが努力していることは何か
という視点に立って組織を見渡してみることです。

きっと、それまで気づかなかったよい取り組みが見つかることでしょう。
『リーダーは夢を語りなさい』は、そのような観方の示唆を与えてくれる一冊です。

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