新入社員のご入社から1ヶ月が経ちますが、あらためまして、迎え入れられた皆様におかれましては、お祝い申し上げます。
弊社でも東京商工会議所会員企業様向け新入社員対象の講座を2日間、3講座担当いたしました。(当方担当は2講座)。毎年、「今年の新入社員は優秀で素晴らしい」と思うのですが、今年携わらせていただきました企業様の新入社員の皆様は本当にしっかりとされていました。
きっと皆様の新入社員の方々も素晴らしいと感じるところがたくさんあったのではなかったでしょうか。
今年度特に素晴らしいと感じた点は、研修中も自律的に考え自ら課題に取り組む姿など目を見張るものがあり、社会人としての基礎的知識(ビジネスマナーや社会人としての態度)などはすでにある程度身につけているような方が多かったように感じました。
コロナ禍があけ、大学などで就活指導の場でリアルでの就職活動やコミュニケーションを意識した指導がなされたのではないかと思います。
表には出にくい新入社員の心理
講座内では、いくつかの問いかけをさせていただくのですが、2度の講座の両日とも、失敗経験に関する質問に対する反応が薄い印象を受けました。
例えばメールでの失敗の経験や敬語の使い方など、ここ数年同じ経験を訊ねる質問時の反応と比較すると、次のような点で違いがありました。
質問はプログラムの要所で設けられています。質問形態は、4つの選択肢や一線上に自分の位置を記すアナログスケールなどで答えていただくのですが、その回答を見ると、両極に振れる回答は多くありませんでした。
このことからの推察として、失敗を嫌うゆえに経験が少ないとみるか、経験が少ないゆえに失敗経験も少ないとみるか、判断は難しいのですが、回答の振れ幅の少なさから感覚的ではありますが、ナイーブさが感じられました。
ナイーブさを感じた一面としては、講座終了時、ほっとして涙ぐむ新入社員のお顔です。(その際、「頑張れ!」の言葉の使い方も難しい時代ではありますが、心の底から応援したい気持ちでいっぱいになります。)
また、講座アンケートの回答でも基本的なビジネスマナーを学べたことへの感謝の言葉もいただく中、メンタルタフネスに触れ自分を大切にすることを伝えられたことへの感謝のお声をたくさんいただいたことからも、表には出てこない心理が垣間見られます。
新入社員の早期離職の現状
厚生労働省が昨年(令和6年10月)出したPress Releaseの新規学卒就職者の離職状況では、大卒者の1年以内離職者は
令和3年が12.3%、
令和4年が12.1%、
令和5年が10.9%
と毎年1割を超えています。(3年以内離職率は令和3年入社で34.9%)
また、退職代行サービスの公開データでは、サービス利用者の14.1%が5月で最多で、長期休み(GWやお盆、年末年始など)後の利用が増えるとのこと。特にまだ職場でのコミュニケーションが深まっていない4・5・6月の利用が多く、退職の申し出さえも直接伝えにくい状態であると言えるのではないでしょうか。
どの業界も採用には大変苦労をし、長い時間をかけています。採用までの費用も就職みらい研究所「就職白書2020」 によると一人当たりの採用単価は新卒採用で93.6万円と言われており、希少で貴重な金の卵をどのように育てていくかは企業にとって重大な課題です。
新入社員意識調査から今すべき新入社員フォローとは
東京商工会議所で例年行っている新入社員意識調査「2025年度新入社員意識調査」では「就職先の会社を決める際に重視したこと」のトップは「社風、職場の雰囲気」(58.8%)と、約6割が人間関係を重視していることがわかります。また、新入社員の意識調査を行っている複数の団体アンケートにおいても、「仕事を丁寧に教えてくれる」ことや「相手の意見や考えに耳を傾けること」や「積極的にコミュニケーションをとってくれる」「いつでも相談できる雰囲気がある」などきめ細やかなコミュニケーションを受けたい。どちらかというと受動的に受けたいというような意図があるように感じます。
このことから、主体的に働きかけられるようになるまでに、まずは、あたりまえですが寄り添い、伴走をしながら一つひとつ確認を重ねることで、「やってみて良かった」「きっと大丈夫」「ちゃんと見ていてもらえるし、助けてもらえる」といった安心感と他者信頼・自己信頼を築き上げることが必要だといえます。
また、そろそろ入社から2ヶ月目を過ぎ、ゴールデンウィーク明けのこのタイミングで、一度新入社員の方々のメンタルと、フィジカルの状況の確認しておくことがとても重要です。
確認点としては、
・実際に始まった社会人生活で、自分の思い描いていた仕事や自分の能力とのギャップがないか
・些細なこととも思えることで、「入社前に聞いていたことと違う」などのリアリティーショックがないか
などの心理面です。
ゴールデンウィークのような長期休みはぐるぐるとその考えの深みにはまっていく時間となりやすい時でもあるため、ゴールデンウィーク明けのタイミングで、
・この一か月で不安に感じたこと
・一人で困っていることはないか、
・成長したこと、良かったこと
などを聞き取り、話しやすい環境になっているか確認することが大切です。
メンターがいる場合は、新入社員の心理について共有の上、メンターに自分の経験も含め、今後の生活リズムについての話をしてもらうのもよいかもしれません。
得た情報・状況は必要な関係者には共有しておくことや、少しカジュアルな場面での上長からの声掛けも新入社員の皆さんに取っては勇気づけと安心感につながります。
今一度、ゴールデンウィーク後にしっかりと新入社員の皆さんとコミュニケーションをとっていただき、夏に向けて明るい笑顔で、仕事が出来ること、成長することへの期待をもって仕事に向き合えるようになっていただけたらと願っています。
弊社では新入社員を育成するOJTリーダー育成セミナーを行いました。今年のOJTリーダー育成は終了していますが、ご興味のある方は開催案内をお送りいたします。
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文責:後藤 真紀子(キャリアコンサルタント)